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恒例の(?)お題シリーズ第四弾です。
今回もジルオール。何だかえらい殺伐とした、旅先男主とカルラのお話です。
其処にRomanは在りません。甘さは皆無(爆)
興味のある方は下のリンクからどうぞ♪
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「みんな、今日は本当にお疲れ様!
あんた達が頑張ってくれたお陰で、思ってたよりあっさりリベルダムを落とせたわ」
くすくす、と心底楽しそうにカルラが笑った。
ロセン城内の一室。数人のロセン兵、副将アイリーン、そして赤色の髪の少年の姿がそこには在った。
集められたのは、いずれもリベルダム陥落の際に功績を立てた人物ばかり。
兵達はカルラに賞賛の言葉を述べられ、嬉しさを隠せないといった様子である。だが副将アイリーンの表情はどことなく沈んでいるようにも感じられた。
そして、それは赤髪の少年――シンも同じ。笑顔を取り繕っているものの、滲み出る不信感を隠し切れないようだ。
「よし、それじゃあ今日はこれで解散。ゆっくり休んで疲れを取って頂戴な。これからも忙しくなるからね」
はっ、と声を上げ完璧な仕草で敬礼。
その完璧な仕草は、彼らが選び抜かれた精鋭である事を如実に現している。
「ちょーっと待った!アイリーンとシンは此処に残ってくんない?」
「何だよ、俺もう疲れてるんだけど」
「そんな事言わずにちょっと話に付き合ってよ、ね?」
言葉尻は穏やかだが、有無を言わさぬ口調。
小さく舌打ちしたシンに、黙って上司の言葉に従うアイリーン。二人の表情には相変わらずどこか疲れたような、そんな色が滲んでいた。
「回りくどいのは嫌いだから単刀直入に訊くわよ。
――二人とも今回の事に関して不満があるなら、此処ではっきり言いなさい」
先程までの明るさとは打って変わったような、厳しい口調。
アイリーンがびくりと肩を震わせ、シンは少しだけ眉間に皺を寄せる。
「そ、そんな、不満だなんて・・・・・・私はカルラ様の判断に、何も異を唱えるつもりはありません!」
「ならその辛気臭い顔は何なのよ。言いたい事があるならはっきり言えばいいじゃない」
「きっと疲れてんだよ。アンティノの野郎にバケモノけしかけられて、色々大変だったんだぜ彼女?あんまり苛めてやんなよな」
「へぇ~。庇っちゃったりして、優しいんだねシンは」
くすくす、と楽しそうに笑うカルラ。しかしその瞳は剣呑な光を帯びている。
それはシンも同じで、口調こそ楽しげであるものの、紫紺の瞳に愉悦の色は浮かんではいなかった。
張り詰める空気にアイリーンが息を呑んだ。あまりの居心地の悪さに逃げ出したい心境に駆られるが、何とか踏み留まる。
「そういやアンタにも、一つ大事な事を聞いておかなきゃいけないんだった」
「あん?俺に何を聞きたいって・・・・・・」
ヒュン、と空を切り裂く音。
カルラの繰り出した素早い一閃が、張り詰めた空気までをも引き裂いた。
シンの首筋に当てがわれた死神の鎌の刃。アイリーンが思わず悲鳴を上げる。
「・・・・・・何の真似だよこれは」
「あんた、クリュセイスをわざと逃がしたね?」
「何の話だよ。そんなん知るかっての」
「とぼけないで。部下の何人かがそう証言してんのよ」
ぐっ、とカルラが鎌を握る手に力を込める。
刃がシンの首筋にわずかに食い込み、血が少し滴り落ちた。
「誤解だってばそりゃ。俺だってあの時は必死だったんだぜ。彼女にまで気を配る余裕なんて無かったんだよ」
「見え透いた嘘は止めなさい。クリュセイスに同情でもしたの?」
「・・・・・・どう思おうがお前の勝手だけど。俺ってば女の子に酷い事出来ない性質なんだよね」
「それが答えって訳ね・・・・・・まぁいいわ。逃げられてしまったものは仕方が無いし」
武器を下ろしたカルラに、アイリーンが安心したようにほっと息を吐くのが見えた。
しかし刃を向けられたというのに、シンは終始飄々とした様子。
カルラが思いきりシンを睨みつけるが、彼は意に介さない。
「こんな温情も今回だけよ・・・・・・次があるなんて、思わないでね。
裏切りは、絶対に許さないから」
「おー怖い怖い。肝に銘じとくぜ」
まるで緊張感の無い様子でシンが呟く。本当にそう思っているのかも怪しいところだ。
「そんじゃ俺、そろそろ失敬するわ。ルルアンタが美味しいご飯を用意して、待っててくれてるもんでね」
「そりゃ引き止めて悪かったわね。もう行っていいわよ」
ぴしり、と完璧な様子で一礼し、そのまま部屋を後にするシン。一度も後ろを振り返らない。
残されたカルラとアイリーンの間に、微妙な空気が漂う。
「・・・・・・悔しいなぁ、ホント」
「クリュセイスを逃がした事、ですか」
「それもあるんだけど、シンのあの態度よ・・・・・・しっかり見透かされちゃってる。ホント、ヤな感じ」
はぁ、と小さく息を吐く。
悔しそうだが、しかしどことなく楽しげな色がその瞳に浮かんでいるように見える。アイリーンにその真意を測る事は出来なかった。
「アイツさ、喉元に刃突きつけられても微動だにしなかったの。
私がシンを殺せないって事、アイツは十分承知してたからよ・・・・・・」
「・・・・・・失礼を承知で聞きますが、何故カルラ様はシンを殺せないと、そう思うのですか」
「まぁぶっちゃけた話、私がシンに愛着を持ってるから、かな?」
アイリーンが驚いたように目を見開いた。カルラも彼女のそんな反応を予想していたようで、少し困ったように笑う。
「今までもアイツには色々助けられてるし、手放すのが惜しいって感じてるだけ。そこんとこ勘違いしないようにね。
裏切りは絶対に許さない・・・・・・次はもう無いから」
そう、次は絶対に無いから。その時は躊躇わず、この死神の鎌で首を刈り落としてあげる。
暗い笑みを浮かべたカルラに、アイリーンが小さく息を呑む。
ああ、この人に決して逆らってはいけない。彼女はきっと、裏切り者に容赦はしない。
血のように紅い夕日を浴びた彼女が、まるで死神の姿そのものであるように見えた。
台詞で20のお題④
お題配布元:SNOW STORM
http://m-pe.tv/u/page.php?uid=katze&id=1
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こんな殺伐とした話を書くのも好きです。
プレイ中はクリュセイスを見殺しにしてしまったので、せめてもの罪滅ぼしにこっそり逃がした設定という事で。
次回はギャグにしようかなぁ。シリアスも好きだけどやっぱりしんどい(汗)